セルビア人はNATOよりロシアがお好き

海外

2022年2月24日に勃発した、ロシアのウクライナ侵攻により、世界中の多くの人たちがロシアに嫌悪感を感じるようになりました。

翌週3月2日(日本時間3日未明)に開かれた臨時国連総会においては、ロシア非難決議に対して、反対したのはベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、ロシア、シリアの5カ国で、残りのほとんどの国(161ヵ国)は、ロシアを非難する側にまわりました。

東欧諸国のひとつ、セルビアもロシア非難決議に賛成したのですが、この国のロシアに対する感覚は、私たち(日本)とは、かなり違っています。

私のWEB英会話の先生に、セルビア人の美人先生(Mさん)がいます。
彼女は、ロシアに若干理解を示し、またウクライナのゼレンスキー大統領に批判的です。

ここでは、彼女から教わった話に、私がネットで調べた情報を加えて、お伝えします。

1999年 NATOによるセルビア空爆(コソボ紛争)

セルビアの南にコソボという、日本の秋田県と同じくらいの面積をもつ自治区があります。住人の約90%が、昔オスマン帝国にいたアルバニア人で、コソボ解放軍を結成してセルビアから独立しようとしていました。これをセルビアのミロシェビッチ大統領が率いるセルビア治安部隊が抑えようとして内戦状態になります。
これに対し、1999年3月24日、NATO軍は国連の安全保障理事会の承認を得ずに、コソボの住人をセルビアから守るという口実で、セルビアの都市を空爆します。空爆は3か月間続きました。当時10代半ばだったこの美人先生は、3か月もの間、地下のシェルターの中で不安な青春時代を過ごしていたそうです。

彼女曰く、現在ロシアがやっていることは、当時のNATOと全く同じ・・・・「クレミアやドネスク自治区の住人を、ウクライナから解放させるためにやっている。」

「ロシアは地上で戦っているので、ウクライナは地上で応戦できるが、当時は、NATOは空からの攻撃で地上に降りて来ず、セルビア軍は応戦できなかった。(悔しい!)」

「多くのウクライナ人は、家を捨てて避難し、都市は廃墟となってしまった。もう戦争が終わっても戻って住む場所などないだろう。しかし、当時、セルビア人は、橋などの重要な建造物が壊されないようにと、人垣を作って空爆から守った。ゼレスキンのやり方は、リーダーとして間違っている。彼はエンターテイナーとしては優れているが。。。」

セルビア人がすべてが、彼女と同じような考え方かどうかはわかりませんが、セルビア人の中にはNATOやアメリカに対して、嫌悪感を抱いている人は多いようです。

1992年~95年 ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争

もうひとつ、私たちが勉強しないといけないことがあります。

それは、1992年から1995年まで続いた、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争です。

ソビエト連邦崩壊でバルト3国などが独立していく中で、ユーゴスラビアに属していた国々が次々に独立していきます。まず、1991年にスロベニア、クロアチアが独立を宣言し、翌1992年にはボスニア・ヘルツェゴビナも独立を宣言しました。

しかし、人口430万人のボスニア・ヘルツェゴビナにはボシュニャク人(ムスリム)の他に、セルビア人、クロアチア人も混在しており、独立を推進するボシュニャク人とクロアチアの勢力に対し、セルビア人は反対し、北部にセルビア人で作る「スルプスカ共和国」を樹立し、内戦状態になりました。

国際社会はセルビア人勢力を支援するユーゴへの制裁、ボスニアでの人道支援を行い、NATOが数回にわたってセルビア人勢力を空爆します。さらに、ボシュニャク人をセルビア人勢力から保護するために、スルブレニツァという町に安全地帯を作り、オランダ軍を国連保護軍として送りこむのですが守り切れず、ボシュニャク人の男性8,000人以上が組織的に殺害されるスルブレニツァの大虐殺が起きました。

これはのちにジェノサイドと認定され、セルビア軍を率いたムラディッチ元大将は終身刑が確定しましたが、この事件の全貌は映画《アイダよ、何処へ?》(原題:QUO VADIS, AIDA?)で観ることができますので、是非一度ご覧になってください。

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そして、映画には出て来ませんが、残された女性は、集められた後にセルビア人に強姦され、中絶が出来なくなるまで監禁され、セルビア人の子供を産まされるという、エスニッククレンジング(民族浄化)が行われたといわれています。

映画は、(監督がボスニア人で)西側で作られていますので、セルビア人が悪玉で書かれていますが、この戦争では、東西ともに多くのプロパガンダが行われたために、セルビア人には、また違った見方ががあるようです。

セルビア美人講師のM先生はレッスンで私に、「日本は、アメリカに原爆まで落とされたのに、どうしてアメリカを信用するの?」と聞くのです。

セルビアはNATOに加盟していない

今回のロシアによるウクライナ侵攻は、その原因のひとつが、ウクライナがNATOに加盟するのを、ロシアが阻止したかったため、と言われています。

上の図をご覧ください。NATO加盟国が青く塗られていますが、ウクライナより西側の東欧諸国で、NATOに加盟していない国が5つしかありません。スイス、オーストリアと、あとはセルビア、ボスニアヘルツェゴビナ、コソボです。

スイス、オーストリアは永世中立国を宣言していますが、残りの3つの国は、NATOが嫌いなセルビアと、セルビアとの民族問題をまだ抱えている2カ国です。

しかし、そのセルビアでさえも年が経ち、2009年にEU加盟を申請しました。2022年現在ではまだ加盟が承認されていませんが、これはEU加盟の話で、NATOへは、余程の情勢変化が無い限り加盟しないでしょう。

このほかに、ウクライナの南東にあるモルドバも青く塗られていませんね。

これがどうしてかは、また別途、勉強したいと思います。

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